私にとっての水引

 

 「水引」という名前を出しても、悲しいことに最近は名前さえ知らない方も増えてきました。
「あの熨斗(のし)袋に使う細いひも・・・」と言うと、「あー」という声が返って来ますが、
印刷された熨斗紙や熨斗袋しか見たことがない方もいらっしゃいます。

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私はなぜか小さい頃から、この熨斗袋についている水引が大好きで、
いつも使った後に外して遊んでいました。
それはちょっと梱包に使う「紙バンド(クラフトバンド)」にも似ていて、
父の仕事でいらなくなった建築図面の青焼きの紙と共に私のおもちゃのひとつでもありました。

大人になってから・・・・もやっぱりそれは気になっていました。
 初めて、編まれたものではないそのままの水引を見たのはディスプレイの仕事の素材・・としてでした。
それはなんて綺麗なものなんでしょう・・・・・すっと細くまっすぐのびて、きらびやかな色で・・・
この存在自体が私を魅了しました。
そして私は常に水引を少しだけ家に常備するようになりました。
しかしそれはラッピングに使ったり、お正月のアレンジに使ったりという
初歩的なことにとどまっていました。
いつか結びができるようになれたらいいなあと夢のまた夢のように思いながら・・・

そしてまたもある日、
もみの木のクリスマスリースに磁器の小物と水引の小物をたくさん飾り付けた写真を使った
ある陶芸作家の方の個展のDMが手元に届きました
メインはその方の磁器の作品でしたが、私はその全体の雰囲気に心を奪われました
こんな風に楽しくさりげなく生活の中で水引を楽しめたらいいな・・と、
強くまた思いました。

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 ディスプレイの仕事の数年後の1995年・・・、
近くの公共施設で「水引工芸教室」が期間限定で開かれました。
ちょっとした物が作れたら嬉しいかもという安易な考えで、ちょうど時間もあったので通うことにしたのですが、
想像したのとは大違いで不器用な私にはとてもとても難しく・・・何度もくじけそうになりました。
 それでもやっぱり水引の素材が好きで、作ることが好きで・・・
その頃、諸事情で建築の仕事に就くことを諦めようと必死だった私は
何か夢中になれるものも欲しくて、私にしては本当に珍しく頑張りました。
それは周りの人たちの暖かい思いやりにも支えられたと思います。

98年の暮れには幸運な事が重なり、無謀にも熊本にて個展も開催することができました。
まだまだの出来だったとは思いますが、
その時の100%を出すことができ、周りの方々に感謝の限りです・・・。
また個展を通してステキな方々とお知り合いにもなれました。

 今の私は、結納品や結婚祝いの時だけ・・というのではなく
みなさんの普段の生活に少しでも自然に水引を取り入れる・・・という事を目標にしています。
それは簡単なことではないかもしれませんが、少しずつ少しずつかなえて行こうと思っています。
 このページをご覧になって、少しでも興味を抱いてくださる方が増えると嬉しく思います。

2002.8.31 TOSHI
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